2011年11月17日木曜日

「アップルシード」が好きだった自分には、大満足: 映画「バンテージ・ポイント」


映画「バンテージ・ポイント」

うん、素直に面白かった。満足したよ。



パッと見たら70点、よく吟味してみたら85点のネタを、120%のクォリティで作り上げた映画だね。

アメリカ大統領狙撃前後の一定の時間を、複数の登場人物の異なる視点によって描く作品構成が、この作品のミソ。
これを活かしつつ、作品のテンポを上げるために、登場人物の背景描写が最低限になっている
気になる人は、それが説明不足に見えるかもしれない。

だが、それがいい。


登場人物の背景を推察するために必要な最低限の情報は、映画の中で提示されている。
それを自分の頭の中で補っていくのが、楽しい。

だから、2度、3度見なおしても、十分に楽しめる。


それから、登場人物の多くが、一流のプロフェッショナルとして行動しているのもいい
プロ同士のせめぎ合いは、スリリングで気持ちいい。


この楽しみ方って、士郎正宗の「アップルシード」シリーズを読んだ人ならわかるんじゃないかな。


うん、とても満足した。




ところで、狙撃される大統領をウィリアム・ハートが演じていたのに、しばらく気がつかなかった。
当たり前だけど、大分老けたもんだなぁ。

自分の中では、ウィリアム・ハートって、「ブロードキャスト・ニュース」とか、「愛は静けさの中に」とかのイメージから、どうも成長していなかったようだ。

2011年11月16日水曜日

患者さんの診察をしていたら、スタッフに打ち切られてしまった




病棟で、慢性期の統合失調症の患者さんの診察をしていた。
この手の診察は、どちらかと言えば、退屈な仕事ではある。
なにしろ、患者さんの状態は、数年単位で大きく変わっていないし、いろいろな意味で変化を望まれている状況ではない。

話を聞いている自分も、「あぁ、この話を聞くのも何回目だろうか……」と思いながら聞くことのほうが多い。
それでも、時々「あぁ、この前のイベントを、この患者さんは、こんな風に解釈しているんだ」と気がつく時があるので、油断はならない。
気まぐれに、今日の昼ごはんの話題を振ってみたら、そのことから患者さんの思わぬ家族への思いを聞き出せたこともあった。

今回の診察も、何かのきっかけで、患者さんの気持ちのどこかを刺激したみたいだ。
いつもに比べると少しだけ積極に、自分から色々と話をしてくれていた。
確かに、妄想まじりで、わけがわからないところも多い話だった。
でも、とても面白かった。
ベースにある思考の流れや趣味趣向が垣間見えてくるような気がした。
もしかしたら、そんな気がしているだけかもしれないんだけれど。

あまりにも面白かったので、とにかく患者さんの好きなように話してもらおうと思って、黙ってニコニコしながら聞いていた。


「ハイハイ、言いたいことは言ったでしょう。診察は終わりにしましょうね」
唐突に、背後から声が聞こえてきて、患者さんは退席を促されてしまった。
……診察終了。

診察についていた病棟スタッフが、患者さんを診察室から退席させる。そして、「先生、すみませんでした」と、一言。

そのスタッフは、気を効かせたつもりなんだろうね。
この病院での勤務を始めて、そんなに時間が経っていない先生。
いつもと同じような話をしているだけなんだけど、先生はわかっていないだろうし。対処に困っているみたいので、助け舟を出してあげた。
そんなところかな? 
多分ね。


fountain pen.JPG / Bright Meadow


次に診察した時には、きっと、あの面白い話はしてくれないんだろうなぁ。
それを思うと、残念でならない。


ここまで書くと、対応したスタッフが悪いように解釈されるかもしれない。
でも、それは違うと思う。

あの患者さんの話に、面白さを感じられないスタッフの感覚は、そんなに変なものではないと思う。
むしろ、今の病院のスタッフとしては、普通の感覚じゃないかな?

じゃあ、あの時、自分の感じていた面白さは、本当に面白いものだったのだろうか?
改めて考えると、なんだか自信がなくなってきた。
でも、精神科治療の臨床場面で、自分は確かに面白いと感じていた。それは、間違い無い。

だから、その面白さを、外に向かって伝えていかないと。

うん、精神科治療は面白いんだ。